将棋も全く打ち方が分からないし、囲碁に至ってはオセロのお兄さんみたいなものだろうかぐらいの認識しかない僕だが、百田さん渾身の長編囲碁小説読んでみた。
囲碁が全く分からなくても、超興奮の血沸き肉躍る歴史小説。
結局読み終えても囲碁の打ち方はさっぱり分からなかったが、囲碁がいかに奥深いゲームなのかはよく分かった。
GoogleのAI囲碁ソフトが、トップ棋士に勝つことが出来たのはようやく2016年になって。チェスや将棋ではとうの昔に人間が敗れていることを考えると、囲碁というゲームがいかに複雑で無数の変化があるのかが分かる。
囲碁が誕生したのは3000年前の中国で、囲碁を発展させたのは碁好きの徳川家康が4つの家元(本因坊・安井・井上・林)を作り出してから江戸時代の日本において。
小説の舞台も幕末近い江戸時代で、この時代は主人公の井上幻庵因碩はじめ、数多くの優れた打ち手が排出された時代のようだ。
今でこそタイトル戦に優勝すれば名人を名乗れるが、当時は入神レベルの格別の強さが認められて初めて名人位を認められたようで、江戸時代に誕生した名人はわずか8人しかいないらしい。
次から次に強敵が現れて世代が入れ替わって、命を懸けて戦う棋士たちの躍動する姿を読み進めるだけでも楽しい。
それに加えて、碁界の最高権威で幕府の囲碁棋士統括の役職でもある「名人碁所」の座をめぐって、盤上での戦いだけではなく、老中や寺社奉行なども巻き込んだ、ドロドロとした政治的な権謀術数の駆け引きがまた面白くてテンション上がる。
どんな世界も頂点や権力をめぐる闘争で人間がやることは大体みな同じだ。そしてそのどれも、傍から見ていると滑稽ながらこの上なくまた面白い。
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