服部文祥さんの書いた三島由紀夫賞候補作品ということで、 サバイバル登山家がどんな小説書いたんだろうと期待半分、過大評価だろうという思い正直半分で読み始めた。
僕は服部さんが岳人に連載してるエッセイが大好きで、毎月楽しみにして読んでいる。だから、山に関するエッセイやノンフィクション書く力は一流だと分かっているが、小説となるとやはり話は別だし。
しかし結論から言うと、無茶苦茶面白かった。
物語は息子を連れて鹿狩りのため山に入った狩猟者と、振り込め詐欺集団のリーダーの話という、全く異なる2つが並行して進む。
「秘密は自分の口からバレる。しゃべらなければ絶対にわからない」という作品のコピーは、交錯していく2つの物語の結末で明らかになるわけだが。
山の中での狩猟の描写のリアリティは、 登山家であり猟師である著者だからこそ。
そして同じく収録されてる「K2」もすごい作品だ。
高所登山パーティーでの心理戦、遭難モノと思いきや、いい意味で期待を裏切る急展開に。
人の命と動物の命は何が違うのか。殺して食べて生きるとはどういうことなのか。
どちらの作品も、人間の倫理と命の意味について考えさせられる。
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