NHKのドキュメンタリー「熊を崇め 熊を撃つ」、いい番組だった。
鳥海山の麓、最後のマタギ集落の一つとされる秋田県由利本荘の鳥海マタギ。秋田といえば阿仁マタギも有名であるが。
そもそもマタギとは、北海道、東北地方から甲信越地方にかけての山岳地帯で、古い方法を用いて集団で熊などの狩猟を専業として行う者。
しかし現代においては、熊を仕留めればそれで食べていけるという時代ではなくなり、専業のマタギというのは実際存在しない。
番組の舞台となってる鳥海マタギたちも、みな農業や他の職業を持ちながら、マタギとして山に入ってる者たちがほとんどだ。
マタギとハンターとは何が違うのかというのが、番組全体の一つのテーマとなっている。一般的な定義ではなく、マタギとは一体なんなのかという問い。
鳥海マタギたちは、熊を山の神として畏れ、そして撃って殺す。山の神からの授かり物である熊を敬い、熊を殺し、その恵みに感謝して命を頂く。
熊だけではなく、山からの恵み、自然からの恵み、全てが神から与えられた恵みである。狩ることそのものを目的とした狩猟者とは異なる、独特の価値観や生命倫理が貫かれてるように感じる。
僕らは普段、精肉されスーパーに綺麗に並んだ肉を買って何も考えずに食べてるけど、それはそもそも屠殺された命だ。
自ら狩ること、殺すことをしてないと、そういう感覚が希薄になる。すべては自然、神から与えられてるものであり、その命をいただいているのだ。
いずれマタギと呼ばれる人たちはいなくなるだろう。マタギたちが大切に守ってきた自然と命に対する姿勢の灯火だけは、時代が変わっても消えることがありませんように。
マタギ 矢口高雄 (ヤマケイ文庫)
posted with amazlet at 19.04.10
矢口 高雄
山と渓谷社 (2017-10-16)
売り上げランキング: 53,217
山と渓谷社 (2017-10-16)
売り上げランキング: 53,217
0コメント