◆マルチピッチクライミングとは
マルチピッチクライミングとは、ロープの長さ以上のルートを登攀する場合に、複数ピッチに分けてクライミングするシステムのこと。
2人1組(あるいは3人)で、リード(トップ)とフォローを繰り返しながら登っていく。リードは登りながら上にロープを延ばしていき、ピッチの終了点で次に登ってくるフォローを上からビレイ。
シングルピッチのフリークライミングと違って、様々な知識と技術が必要になる。アルパインクライミングでは必須の技術。
アルパインクライミングではなく、フリークライミングでのマルチピッチルートと見なされてるルートもあり、日本では「アルパインクライミング」と「マルチピッチクライミング」という言葉をルートに応じて使い分ける傾向になっている。
システムとしてはアルパイン、フリーのマルチピッチともに、マルチピッチクライミングであることに変わりない。
自分の基本スタイルを確立して、その基本形をベースに、パートナーや状況に応じた応用が効くようになりたい。
◆マルチピッチクライミング基本装備
・ハーネス
・ヘルメット
・クライミングシューズ
・ビレイグローブ
・ロープ
・セルフビレイコード (PAS等)+安全環付カラビナ
・フォロー確保機能付ビレイデバイス+ 安全環付カラビナ
・フリクションコード+ 安全環付カラビナ
・クイックドロー、カミングデバイス(カム)必要数
・支点構築セット(安全環付カラビナ3枚、安全環付クイックドロー、120㎝ソウンスリング)
以上は一般的なルートにおける最低限の装備の一例。他はルートと考え方に応じる。
◆マルチピッチクライミング基本手順 (ダブルロープの場合)
(1) 必要なギアのラッキングとロープの準備
・ラッキングの際のクイックドローのゲート側は外向きが外しやすい。
(2) アンザイレン
・セカンド側のロープが下になるようさばき、ロープを左右順に下に並べる。
・どちらの色のロープを左右どちらに結ぶかをお互い確認してハーネスに結ぶ。リード、セカンドともに壁を向いた状態で結べばねじれなく分かりやすい。
(3) ビレイのセット(ビレイヤーもセルフビレイを取る)
(4) トップは中間支点を取りながらリード
・リングボルトへはクイックドローを下から掬い上げて掛ける。ゲートと岩壁が相対する掛け方はしない。
・クリップする際のクイックドローのゲート側は、原則、進行方向の逆側。墜落時はホイップラッシュ現象によって、カラビナのゲートが開くことが少なくない。ワイヤーゲートカラビナはホイップラッシュ現象によるカラビナの開きに強い。
・ロープの流れが悪い箇所、クラックなど状況に応じてスリング、ナチュラルプロテクションを使用。
・ダブルロープの場合、ロープが交差しないよう流れに注意。
(5) リードのビレイ
・ダブルロープの場合、ビレイヤーは右手でロープ2本を同時に操作するのが基本。
(6)終了点での支点構築
・外側から内側に向かって120cmスリングを通した安全環付きカラビナを取り付け、カラビナを反転させる。
・セルフビレイコードかクローブヒッチで仮のセルフビレイを取る(必須ではない)。
・ダイレクトビレイ用の穴に支点中央のカラビナを通す。
・フォロークライマー側のロープが上側、ビレイ側のロープが下側の位置になるよう通す。
・ロープの輪とリテイナーをHMS型環付カラビナでクリップ。
・ビレイデバイスの向きは、カラビナ通すチューブ側が壁側になる。
・クライマー側のロ-プを引きロープが正確に挿入されてるか確認。
(11)セカンドビレイの準備が出来たら、トップは「ビレイOK」コール。セカンドは「登ります」コールを出し、「登ってください」コールを確認したら、セルフビレイを解除して登攀開始。
(12)セカンドのビレイ。
・常にたるみのないようにビレイ。一本のロープのみたるみを取る場合、一本だけ持って引く。
・ロープはメインロープ上に振り分けながらビレイする。
・ビレイしながらの振り分けは地面にロープを垂らしていって、時々綺麗に振り分けてもいい。
原則、制動手はロープから離さないがフォールしてもビレイデバイスはロックがかかるため、振り分けなおすときは両手を使って可。
(13)セカンドは、終了点に到着したらまずセルフビレイを取って、お互い次のピッチの登攀準備。
・ツルベの場合。ビレイヤーは支点からビレイデバイスを外し、そのまま自分のハーネスのビレイループにビレイデバイスをセット。
・トップが変わらない場合はロープの束をひっくり返して渡すのが基本だが、シビアなピッチではたぐり直して整理。
・お互いにビレイのセットを確認し、装備の受け渡し。
・トップは必ず支点で0ピンをクリップ。登りますコールをかけて、バックアップセルフを解除。
(14)懸垂下降
ルート終了点からは登山道に出て下る場合もあるが、懸垂下降する場合が多い。懸垂下降ルートは登攀ルートと重なってる場合も多く、他のパーティーが登っている場合など、ロープダウンできない場合も多い。その場合は、上からロープを繰り出してもらう。
① クライマー側末端を解除して、懸垂支点に通しダブルロープをオーバーハンドノット2つで連結してから、振り分け。
③ ロープダウンもしくは繰り出しながら懸垂下降。
④ 複数ピッチの懸垂下降の場合、下降点での2回目以降の懸垂下降セット。
・次の下降点に着いたら引くほうの色のロープをアンカーに通しておく。
・フォローが下降し終えたら順次アンカーに送り込んでいき、結び目がくればあとは引き抜く。
・末端側から1本ずつ振り分けていく。
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