あの『永遠の0』のあとに書き下ろされた百田尚樹の大長編。
何しろ長い、上下巻合わせて2400枚。次から次へと抜群に面白い展開が続いて一気に読んでしまいたいのだが、その時間が取れないもどかしさ。
物語は、作者である百田尚樹の自伝的キャラクターを思わせる。主人公の作田又三が生まれたのは昭和30年代の大阪。
頭がよくて、まっとうに世間並みの人生を送ってれば、それなりの人間になってるはずの主人公。
しかし周囲に迎合出来ず、自分を簡単に曲げられない我の強い男。
大学も仕事も。
また新しいことを始めるの繰り返し。
ある意味では伝統的な私小説とも言えるかも。破天荒な冒険的人生として読んでるだけでも十分面白いが。
どんなに地頭が良くて、ほとばしる情熱を持っていたとしても、主人公のことはダメ人間と一刀両断すればそれまで。
それでもこの物語の主人公に惹きつけられながら読んでしまうのはなぜか。
いや、行かざるを得ない。
気付いたらイライラしながらも僕は主人公に共感している。
北海道での密漁船に乗ってた話は、百田尚樹が自身の実話だと告白していること。
て。
それでいて、みんなが期待するようなラストは待っていない。
これだけの長編を読ませて、これで終わりか。でもそれが僕にとってはむしろ、いい終わり方のように感じた。
人生とは生きるに値すること。そのことに主人公が気付くだけの物語だったとしても。
錨を上げよ <一> 出航篇 (幻冬舎文庫)
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