アルコールの力を借りないと人と接すことができなくなっていく。
そんな彼女が、儚いけれどそれだけがあれば生きていける光を見つける物語。
高校時代、初めてのセックスのエピソードは本当にやるせない。魂が損なわれることのやるせなさ。
途方もなく長い時間が必要だ。
34歳の孤独なフリーランス校閲者である冬子。彼女が唯一関りを持ってる女性が大手出版社の社員である石川聖。
同性からは超嫌われて、誰とでも寝る女と陰口を叩かれる。
そんな全く対極にいる二人が次第に友情に近い感情を育んでいく。
物語はさらに、彼女が58歳の三束さんと偶然に出会い、週に1回喫茶店で会話するだけの静かな関りが進行していく。
三束さんと会って静かな会話をする姿はなんともいとおしい。
筆者のあまりにも美しい文章。この文章がやはり作者最大の魅力。
「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。
わたしはこの真夜中を歩きながら思いだしている。
光をかぞえる。
あるいはこれからどこかへゆく人の手のなかの携帯電話。
真夜中は、なぜこんなにきれいなんですか。
真夜中はどうしてこんなに輝いているんですか。
どうして真夜中には、光しかないのですか。
(中略)
真夜中の光はとくべつなんですよ。
そうですね、三束さん。なんでもないのに、涙がでるほど、きれいです。」
真夜中という真っ暗な世界だからこそ光が見える。真夜中の暗闇を経験した人にこそ、本当の光が見える。
ラストは切なくもきれいな光。
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