『北極圏一万二千キロ』植村直己 (著)

 
前著『極北に駆ける』に描かれたグリーンランド北部の村シオラパルクでの極地生活と3000キロの犬ゾリのトレーニングを終え、グリーンランドからアラスカの先端までの12,000kmにわたる犬ゾリ行。
 
登山家としての植村直己といえば、日本人初のエベレスト登頂や、世界初の五大陸最高峰登頂というタイトルでそれはそれでもちろん素晴らしい偉業だけど、なんといっても植村さんの真骨頂は犬ぞりでの極地の冒険。
 
1年6ヶ月間、単独で狩猟しながら犬ぞりだけで極地を行動するとか、ちょっと想像力の範疇を超えている。
 
読んでいてこりゃ大変だなと思うのは犬たちのコントロール。何しろ生きた犬を何頭も連れて動力にして進むわけだから、すさまじい苦労が伴う。
 
その中でも僕が一番興味を惹かれたのは、唯一のメス犬をめぐるオス犬たちの争い。
 
犬ぞりで走りながらも交尾しようとしたり、どんなに腹が減っててもメス犬が発情するとオスたちの争いは絶えずに、みんなケンカで傷だらけになってソリを引くこともできなくなる。
 
やっぱりこれが生き物の本質なんだな。僕だけじゃなくてよかった。
 
弱い犬は強い犬にエサも横取りされたりする弱肉強食な世界なわけだけど、それでもメスと交尾しようとするときは強い犬にも果敢に立ち向かっていくところがまた笑える。
 
この物語の主人公は犬たちだとも言えるかもしれない。
 
氷の表面が針のようにとがり犬の足を傷つけて、氷雪の上に真っ赤な血が滴り犬は悲鳴をあげる。
植村さんがちょっと油断したすきに、犬たちが全部逃げてしまって氷の大地に置き去りにされたり。
 
メスの出産、食べるものも満足になく犬ぞりを引いて疲弊していく犬たちの姿など、読んでいて犬たちに自然と感情移入してしまう。
 
ちなみにメス犬のアンナはこの旅のあと、北海道の旭山動物園に引き取られ、その後に子犬も出産。極地と日本とどちらが幸せか。
 
 
 

サミットガイド宮崎薫Office WEBSITE

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